2023年11月28日

資本主義の『始まり』が面白い!

ドイツのマックス・ヴェーバー著

『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

1.近代資本主義の原点

近代資本主義の原点が、「営利の追求を敵視する質素、禁欲主義のプロテスタント」にあるというパラドックスは何とも不可解な変遷を感じます。

その変遷の大雑把な流れは、「禁欲的労働」によって蓄えられたお金が、「浪費されることなく貯蓄」され資本蓄積が起り、その獲得された資本が、「財貨財宝などの形」に置き換えられ、資本としての本質を棄損されることなく、「恒常的資本」という性質を獲得し、利潤追求のために不断に「再投資」されるという変遷を辿った事です。

2.「カトリックとプロテスタント」の代表的な違い

違う内容 カトリック プロテスタント
別の呼称 旧教 新教
教会 豪華 シンプル
聖地・聖地巡礼 あり なし
聖職者敬称 神父 牧師
十字架 キリストあり 十字架のみ
聖母マリア 像あり 像なし
十字をきる する しない
儀式 ミサ 礼拝
聖職者婚姻 ×
聖職者階級 あり なし
宗教歌 聖歌 讃美歌
懺悔室 あり なし
日本の教会 一部「天主堂」 ほぼ「教会」
聖職者性別 男性のみ
(ファーザー)
男女
修道士 シスター(女性) なし
ブラザー(男性) なし

3.ヨーロッパ中世の「財貨」とは

上述の「財貨」とは、貨幣ではなく物的で有用な地金の状態でもなく,金銀細工のような物だったり、また、研究者M.ブロックが「西欧中世の自然経済と貨幣経済」の中で検証している、胡椒(こしょう)もその1つだった様です。

いずれにしても禁欲主義が「お金」そのものでなく「財貨」で蓄えられた事で「資本」が目減りすることなく蓄積され、やがてその「蓄積」が再投資されていくいう近代資本主義へと変遷していく流動感が面白いですね。

4.ヨーロッパ中世の「金融」について

ヨーロッパ中世の時代は、現在とは全く違う「金融」に対する認識があり、ユダヤ教とキリスト教では異なる認識であった事を聖書に求めることができます。

ポイントは、旧約聖書に依拠するユダヤ教徒(教本「旧約聖書」)も「お金に利息を付けて貸し付ける金融」に対しては厳禁でしたが、異教徒である「キリスト教徒」に対しては許されているという点です。

更にキリスト教の教本である「新約聖書」に依拠した厳禁する方向性は、排泄物と同じ様に扱うほどの認識であった事が驚きです。個人的な感想では、「汚いもの」だからこそ異教徒に対しては「貸付ても良い」との認識なのかもしれないと考える所です。

5.カトリック時代の一般教義

カトリックの時代には、世俗的な欲望を自制して他人を助ける善行と協働に努力すれば、神に認められて天国に行くことが出来るという教義解釈が一般的でしたが、この立場に立つと、人間の主体的な努力(善行)で神の義の判定が決定されることになり、全知全能の神の意志を勝手に推測してしまうことになります。

カトリックの能動的な信仰を認めてしまえば、無力で憐れな子羊である人間風情が、自分の天国行きの未来を決定できる事になり、神の義(正しさ)の基準を人間が推断してしまう事を意味します。

ルターは、こういったカトリック的な人間の主体性を捨てない信仰の在り方は間違いであるとし、人間は天国に行くことを目的として禁欲や善行に努力しても救われないと言います。

6.日本とヨーロッパの宗教感の違い

免罪符(贖宥状販売)によって,教皇庁はサン=ピエトロ大聖堂の建築資金を調達しようとしたり、免罪符を購入する事で「罪から救われる」した本来の根本思想から外れて拝金主義となっていたカトリック教会に対して、ドイツ宗教改革の始まりを告げたルターやフランスに生まれたジャン・カルヴァン(Jean Calvin 1509-1564)によって改革がもたらされた。

キリスト教においては、「人生は一度きり。悪行か善行で天国行きが決まる訳ではなく、予め決まっているいう予定説」があり、現在の日本人のまだ少し残っている「仏教感(輪廻転生)」とは程遠い、いわば「自分は1度切りの人生において地獄にいくのか」と感じる恐怖に近い時代風潮が背景がありました。

7.中世における宗教改革と予定説

カルヴァン派の特徴が世俗内的禁欲と予定説と労働。世俗的というのは、教会の外部のことを指します。要するに教会にいる時のみ禁欲的になるのではなく、実際の生活においても禁欲的であることを言うのです。

つまり「善行しようが悪行しようが天国と地獄にいく人間は予め決まっている」とする考え方を根本思想としている宗教感により、カルヴァン派の特徴は、世俗内的禁欲と予定説と労働です。世俗的というのは、教会の外部のことを指します。要するに教会にいる時のみ禁欲的になるのではなく、実際の生活においても禁欲的であることを言うのです。

8.キリスト宗派と2013年の経済危機

2013年にヨーロッパの経済危機に見舞われましたが、PIIGSとは、2008年の世界金融危機後、欧州で財政悪化が特に懸念されるポルトガル・イタリア・アイルランド・ギリシャ・スペインの5国「Portugal, Italia, Ireland, Greece, Spain」の頭文字から名づけられましたが、この中には「プロテスタントの国」は入っていないとう事実は意味深いです。ギリシャは東方正教会、他はカトリックだという事が知られています。

9.ジャン・カルヴァンの宗教思想は

奢侈と華美を徹底的に排除した禁欲的な信仰生活を普及させ、絶えず勤勉に労働と信仰に励む模範的なプロテスタントを数多く生み出しました。

勤勉と禁欲(貨幣の蓄積)、職業労働(天職)の肯定により構成されるカルヴァンのプロテスタンティズムは、また、世俗内的禁欲は、享楽のために富みを消費すること否定します。その為、カルヴァン派の人々は、芸術・文化のために富みを消費することを否定します。

10.「宗教改革の祖」ルターの信仰の基盤

ローマ教皇やカトリック教会の権威を否定するこうした新宗派の信徒を総称してプロテスタントといいます。人間が義であるか義でないかを決めるのは飽くまでも全知全能で完全な善を体現している神であって人間ではない、人間には神の恩恵と救済を信じてひたすら祈るしか方法はないとルターは主張しました。

プロテスタンティズムのルーテル教会(ルター派)を創設した宗教改革者ルターの信仰の基盤は、神の義を徹底的に信じる『信仰義認説』と聖書の記述にある規範と典礼を忠実に守る『聖書中心主義』にあります。ルターはキリスト教を信仰する本質は『信仰のみ・聖書のみ・神の恵みのみ』であり、ローマ教皇を頂点とするローマ・カトリック教会の権威や聖性を信仰することは、必ずしもキリスト教の本質ではないと考えました。

ローマ・カトリック教会の宗教的権威を否定し、キリスト教の聖典である聖書に従って敬虔な信仰を行う者全員を司祭とするという考え方をプロテスタントの『万人司祭主義』といいます。

11.サン・ピエトロ大聖堂と免罪符

カトリック教会の伝承によれば「使徒ペテロの墓の上」に立つ,カトリック教会の中心「サン・ピエ トロ大聖堂」。キリスト教の教会建築としては世界最大級の教会堂建築。創建は4世紀。現在の聖堂は2代目にあたり、1626年に完成したものです。

北に隣接してローマ教皇の住むバチカン宮殿、バチカン美術館などがあり、国全体が『バチカン市国』としてユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されている。

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