2024年5月8日

論理的説明に必要な12の道具

目次

【2】論理的説明に必要な12の道具

解決したい内容に対して必要な「道具」があります。「論理的」思考ができない方の多くは、簡単言えば準備不足な方と言えます。何が準備不足かと言うと「道具」であり主には12種類ありますので説明してみます。

1 .既存の理論で良く使われる内容の代表的なものには、「ある基準以上か以下」を「〇か✕」で仕分けて考えます。どこに「一線」を引くかを決めるところから始まります。

例えば全体の平均値以上であれば〇、以下であれば✕となります。他には目標の95%以上の達成なら〇、80~95%なら△、80%未満ならっ✕とうのが多い一線の引き方です。論理的である基本は、「仕分け方」にあると考えて下さい。

もう少し文章化して言えば、「2本足で歩ける哺乳類A」でありかつ「言語を持つ地球にいる動物B」となれば、それは「人間だC」と特定できます。つまり、AでありかつBならばCであるという、

「一般的」な事実Aと事実BからCである事実を導き出す方法です。この方法は「帰納法」といい数学で習いました。もう1つ別の理論に「演繹法」があります。こちらは既に知られている客観的な事実「内角の和が180度であればその多角形は3角形です」と特定する方法です。もっと簡単な例では四則計算があります。「1+2」=「3」ですというのも「演繹法」です。

2 .よく使われている比喩として有名なものに、「目から鱗が落ちる」「風が吹けば桶屋が儲かる」「氷山の一角」「水面下に潜む問題」「80:20の法則」「崖っぷちに追いやられる(窓際族)」などが論理的に話す時によく使われます。

これらは、これから説明する論理の全体像を連想するきっかけとなる言葉ですので非常に便利な為、よく出てきます。「目から鱗が落ちる」はAからBが剥がれる事実を説明する場合には使えます。

「風が吹けば桶屋が儲かる」の場合には、AとBは一見、全く関係かないようでも連鎖するとこうなるという導入となります。次に「氷山の一角」はAを上から見ても隠れている事実が沢山あるという現状説明にぴったりな導入となります。

更には、「水面下に潜む問題」は、全く常識的に想定した一線の下には問題が潜んでいる場合に使えます。「80:20の法則」は全体の80%の営業成績を全体の20%の人々で販売している法則が良く知られています。最後に55歳ころから会社の窓際の隅に追いやる悪しき好き嫌い人事の結果を表す表現です。

結論としては、これらの言葉に共通する内容は、「一線」を決めて仕訳けるという事です。つまり「仕訳して説明する方法論」を使って考える事を論理的思考と考えて貰えば良いと考えます。

3 .背景となる分析結果を使って根拠を説明する事が論理的説明には必要になります。この時に必要な意識は「何を」「どの様に」に「省く」必要があるのかというが意識です。

先ずは「何を」ですが、これも分析すべき「交点」をマトリックス(行列)にして考えることから始めます。ただし、重要な視点はいかに無駄を省くかという「戦略」意識です。

分析すべきその交点は「人、物、金、時、情報」の中での掛け合わせになります。例えば、横軸は時(4月・5月・6月・7月・8月・9月・合計の上半期)で縦軸は人(担当営業10人)のような横軸は7列、営業担当者名を10行のマトリックスにしてそれをエクセルでグラフ化します。

この様なグラフで大枠を把握した上で、成果の出ている〇の人、出ていない✕の人、期待値よりは少し低めの△の人に仕訳して、〇の人は「何故、好調か」△の人は「何故、目標が未達か」✕の人は「何故、大幅未達なのか」を更に分析をします。一般的には✕の人を深く分析していきます。✕の人の中で横軸に物「商品1、商品2、商品3」として、縦軸は人「✕の営業」で更にグラフ化していきます。

そうすると営業1は商品1が売れていない、営業2は商品2が売れていないという結果がでてきます。そこで更に営業担当別に販売できていない商品に対して、「何故、販売できないか」の要因分析を「何故何故を5回」ほど重ね真の原因を見極める方法が分析の流れです。

4. PDCA(PLAN、DO、CHECK、ACTION) サークルを回して改善活動を係、課、部門、事業部、会社全体で行う場合があります。分析した結果から「✕」になる原因に対して改善策を計画するのがPLANです。

そのPLANを実施するのがDO、そしてその進捗を管理するのがCHECK。そしてDOしている中で順調にいかない部分に対して修正対策を実施するのがACTIONです。

このPDCAを繰り返す事で、組織が改善される流れ、動きがでてくる事で組織全体が会社方針に沿って収益がでるという体質になります。

車のトヨタは有名ですが、メーカーの品質管理では常時使われている手法であり、この活動ができる組織体は一定の社会的信用を持ちます。何故なら、この活動を継続できる事自体が、他社との差別化であり「戦わずして勝つ」戦略を備えた組織体だからです。

5 .文書の軸、流れとなるストーリーがない書類や説明は、読み手、聞き手には非常に退屈であり細かい内容を理解するモチベーションを維持できなくなります。

もし小説にストーリーが無ければ小説とは言えないのは当然ですが、会社の報告書ではストーリーの定番が存在します。その定番を知っておれば簡単です。簡単にご紹介します。必ず役に立ちます。

先ず、報告書の名前(テーマ)「~について」があります。それに続いて①「現状の問題点」⇒②「目標」⇒③「目標達成の為の対策」⇒④「対策を継続して運営していく為の歯止め」を書けばおしまいです。この流れを知っていれば「」の内容をを書く為に「人、物、時、金、情報」に焦点を当てまとめます。

会社での報告書はこれだけですが、このストーリーを早く適切に書ける管理職はそこそこの規模の会社でも多くは拝見しませんでした。大概はどこかが抜けていて報告書になっていない下手な方が多いです。その原因は定番の論理的ストーリーである①~④を教えられていない事にあります。

6 .部分と全体、集合の考え方(含む、含まない)をきちんと理解されている方も多くないのが現状です。目標は目的(全体像、方針)のなかの部分だという事の理解が必要です。

間違って理解されているパターンとしては、目標を達成したら全て完璧だと考えてしまう人々です。

簡単な例で言いますと、野球の試合の目的が「試合に勝つこと」だとします。9回の内、7回まで勝っていても9回の裏で逆転されては負けになります。当然の事です。スポーツに喩て言えばわかり易いのですが、この当然のことを文章や報告書では全く意識していない内容のものが恐らく80%程度はあると感じます。

つまり、部分は書くが、その全体像(目的、方針)が書かれていない場合や、全体像(目的、方針)はあるが、部分に当たる1回から9回迄で勝つためのピッチャーの使い方やスクイズ、バンド、盗塁などの攻撃の仕組などを事前練習する時間の配分等が書かれていない等が多くの抜けがあります。全ては、書くべき定番を知らない事に尽きます。

7 .戦略(戦かわずに勝つ)が最高の勝ち方です。その極意は「競合のいないジャンルを創出する」か又は「他が追随できない連係がある」事です。

後者は「伝統」「ブランド」「改善」「川上から川下までのサプライチェーン」などが該当します。組織の戦略が無ければ必ず倒産します。戦略が間違っていて戦術が正しければ赤字は増幅します。

戦略は「差別化」ですが、正しい差別化でないと無意味だという事になります。

そこで間違った戦略にならない為には「論理的思考、分析」を「論理的な説明」を基に「合理的な判断」を行う事が必要になりますが、その合理的な判断の基準は「社長の考え方」か「最終の決済機関」となります。

よく社長が成績が悪い部下を責めますが、本当は社長の戦略が間違っている事が大半でしょう。

8 .戦術(方法論+上司の進捗管理)と戦略の違いは、先ほどの全体と部分で言えば、「戦術=部分」となります。字のごとく戦術は「戦いの術(すべ)」ですので、戦い方にその進捗を管理し指示する所までが戦術の全体となります。

戦略が間違っていると取り返しがつきませんが、戦術は場面で改善や修正すれば済みます。まさにPDCAサイクルと同じです。会社で考えれば戦略が社長の担当で、戦術は管理職の役割となりますね。

従て、管理職に必要な能力は分析力、進捗管理能力、そして修正能力となります。これらの能力の基は「現場状況の把握」となりますのでコミュニケーション能力や交渉能力が必須となります。

9 .マニュアル(手順記載のみ)と戦術の違いは「進捗管理の実行者」つまり管理者がマニュアルを修正しながら実行していく事にあります。

マニュアルは「人:顧客、物:商品、金:商品単価、時:時代、情報:販促媒体」により細かい対応内容が変化する事までは想定されていません。時間は、現在限定となっています。

つまり、マニュアルを「人、物、時、金、情報」の変化に伴い修正する術を含んだ内容を戦術と言います。こえでマニュアルだけ作ってては駄目だいう事がわかります。常に周りの環境が変化するという視点が大事ですね。

しかしながら、現時点のマニュアルを作成する文化が継続されている組織体は、戦略的な組織体であり、大変重要な能力です、従ってマニュアルとPDCAが揃えば戦略的組織体と言えます。

10 .差別化(区別できる差異)は、戦略的思考の基本です。10年程前から特に注目されえいる戦略に「ロングテール戦略」というものが有ります。この戦略の代表的な企業がAMAZONです。

何が長い「しっぽ」かと言いますと、ばか売れしている売れ筋の商品群(棒グラフにすると縦長な部分)を怪獣に見立た場合、その怪獣の「しっぽ」が殆ど売れない商品群が横長に連なる為に「長いしっぽ」表現してネイミングされています。

インターネットの急速な発展により、昔なら探せなかったニッチ商品が沢山探せる時代となり、数少ない売れ筋商品に着目するのでなく、ニッチな商品を沢山販売する事で差別化している販売戦略です。

特にここ10年間でコンピューターの計算スピードが特異点に達することで「人、物、金、時、情報」に加えて「感覚」「空間」を軸にした差別化が進むと言われていますので、差別化という概念がもう逆になくなる時代がくるかもしれません。

11 .スタンス(立場は複数ある)が同じか違うかで全く対応が異なる場合があります。例えば、憲法9条論議があります。簡単に言えば「武力放棄」という立場と「武力保持」のスタンスです。

相反する立場で議論すると全く反対の対応となりますが、同じ人間でありながら「愛国心」という意味では「同じ」だとう立場、スタンスをもっています。

社会では、どの「スタンス」で考えているかを知らないと判断を間違えます。このスタンをヒアリングするコツは「共通する部分」を確認する作業から入る事です。違う立場であるけれども「共通項」があれば、その入口から相互に話し合いの場を持つチャンスが生まれます。

初対面で相性の悪そうな人であっても「同じ年」「同じふるさと」「同じ学校」「趣味が同じ」など共通項があると対応が変わる事を経験された事があると思いますが、腹を割った話ができると「スタンス」の違いを乗り越えた連携方法が探れます。

12 .掟、ルール(社会的通念、法律)は行動範囲を明確に規定します。ルールは、縦軸に「人、物、金、時、情報、空間、感覚」と横軸にも「人、物、金、時、情報、空間、感覚」の各々の交点に発現します。

交点こそ「論理的思考」の的と言えます。交わる部分がない場合にはルールは必要ではありません。つまり「論理的思考」のコツは「交点に潜む問題」を探しだす能力であり、現在はその能力が求められます。

一方、コンピューター能力が特異点に到達した後には「差別化」が驚異的に多く大きくなる事で「交点」がなくなり、分析が不要になり「論理的思考」の価値がなくなり「新たな理論」のみの発掘が重要になるのではないかと考えますがいかがでしょう。